西之島見てきました

前回の小笠原まとめがまとまっていないのに2度目が先に。
今回の小笠原は西之島に行きたいがためでした。ので、西之島中心に。

散々ここでも書き散らかしているので「もう西之島の説明はお腹イパーイだよ」って方が多いかと思うので割愛します。このへんにあるので。

だいたいが独り旅なのですが(企画翌日決行とか多いので)今回はタイ在住の人妻をダイレクトにピックアップし(そしてこのために予定していた帰国をずらしてもらったり)ての6日間でした。
父島到着の夜に行ったナイトツアーで友達がムカデに嚙まれてしまうというアクシデントがあったものの、朝にはその腫れも引き雨の中の出航となりました。

父島から西之島までは西に約130km、約3時間ほどかかります。
8時半におが丸に乗船、9時出航。
西之島へ向かう途中、なんとも素晴らしい事に「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ」の著者川上和人さんが乗っていらしてさらに講演会まで開催してくださることが判明。
実は父島に向かう途中で川上さんが乗っている事を知り、今回の西之島へも行くのでは?と思っていたのですがまさか講演までしてくださるとは。著書の軽快なテンポを読んでいたため絶対プレゼン面白いんだろうなととても期待していました。
この時の様子は撮影禁止のため一切残っていません。残念だけど。
講演が始まる前に「西之島へ上陸した際の映像」を流してくださったりして、西之島になぜだか非常に思い入れの強い私としてはこの時点で胸アツで息がつまりそうでした。
講演の内容は西之島や海鳥の解説がみっちり50分。「島の一生」という今まで聞いたことのないワードが出て来たりとか(この言葉を知ったおかげで島を見る目が変わったともいえるかもしれん。翌日のドルフィンスイムで兄島を見て色々思った)西之島の価値がどこにあるのかとか、改めて「夢中になっていた西之島」から少し離れたところからしっかりピントを合わせる事が出来て、この講演を聞いただけでも良かったのではと思うくらい。あのプレゼン資料欲しい。シェアしてないかなぁ。
がっつり一言も漏らさない勢いでかぶりつきで聴きながらiPhoneのメモ帳でメモを取るというめんどくさいことをして、「さてあの調査機器の運命や如何に!?」というしめくくりで終わった講演のあと、あまりに嬉しかったためご本人と一緒に写真撮ってもらったりしちゃって。

一旦客室に戻り仮眠取って(アネロン入れてるので眠いのだ)到着予定より早めにデッキへ。
空はしっかり曇っていて、海と空の境目がわからない。雨も土砂降りではないものの傘は欲しいくらいの量。
私は6デッキの特1等室辺りに陣取ったのですが、雨具を一切持って来なかった事を既に反省。雨がとにかく吹きこんでくるので、デッキの手すりに肘をついて海を眺めようとするとしっかり雨に濡れてしまうのでした。
もちろんそんな事は一切構わずカメラを構え西之島が見えてくる方向を見据えていました。
しばらくするとカツオドリが飛んできました。鳥がいるということは、島が近いという事です。
もうすぐだ、と思っていたところ、見慣れたカツオドリの中に1羽、白い鳥が。
もしかしてあれは!!!!!
慌ててシャッターを切って、もうピントが合っていなさすぎでちゃんと写ってくれず。それでもやっと1枚まともなのが撮れました。

ええい大きくしてしまえ!

日本では西之島にしかいないという、アオツラカツオドリです。
本物に会えてよかった…。
ガイドの方が「今、アオツラカツオドリが飛んでいます!カツオドリの中に1羽だけ混じっています!」と叫んでいました。
うんうん、見えたよ!ちゃんと元気に飛んでるよ!!もう涙が出そうでした。
徐々にデッキに乗客が増えてきて、ガイドの方が「西之島見えてきました」の声で一斉に手すりから乗り出して見てみた。
これが生まれて初めて見る本物の生きている火山島。

西之島は徐々に大きくなり、到着予定時刻にはその平べったい島の上にスコリア丘が乗っている姿がはっきりと見えてきました。
うわぁ…これが待ち焦がれた西之島か…となっていたところで、ドォォォォォォンと大きな地響きが聞こえました。思わず雷かと思ってうわ!と声が出てしまったんだけど、いやこれは雷鳴じゃなくて噴火の音じゃないか?と思ったらやはり噴火の音でした。
こんな音がするなんて、この音をこんな間近で聴けるなんて。
吹きこむ雨に眉をしかめつつも、その音のする噴煙の元を凝視していました。

前回の西之島クルーズはとてもコンディションが良く、爽やかな五月晴れに西之島に生息し始めた海鳥たちも見渡せたようでした。
その後の調査上陸も(初上陸は)天候に恵まれたそうで(川上さんのお話では、2度目の上陸?は荒天で結局10日間の調査のうち西之島にいたのはたった4時間だったそうで。残念)、今回はツアー企画したところでも想定外だったのではと思います。こんなに荒れるとは…って。
でも、私はザ☆観光なベストショットが撮れた前回よりも、雨にかすみながらも凄まじい噴火音を轟かせる今の西之島を見る事が出来た事が本当に嬉しかったのでした。確かにアオツラカツオドリの営巣地は心配だし今後どうなっていくのかわからないからもしかしたら旧島が全部飲み込まれてしまう可能性も無きにしも非ずだけど、でも、あの噴火音を体感出来た事が何よりも感動だったんです。
何度も何度も、西之島は噴火を繰り返していました。
私の細胞の全てが震えるほどの爆音を繰り返し噴煙を靡かせていました。

語彙の少なさに愕然とするばかりなのですが、とにかく「凄い」しか出てきませんでした。
この西之島は「太平洋プレート」に乗っている島で、このプレート上にある島は伊豆半島を含む(伊豆半島は昔島だったんだぜー)伊豆諸島を網羅しており、西之島から伊豆諸島を臨む先には日本有数の火山、富士山があります。
父島のある小笠原諸島とは別のプレート上にこの噴煙あげる島は乗っており、その鼓動は小笠原諸島で括るよりもむしろ伊豆諸島と絡める方が自然だったりするようです(この辺参考に)。
そんな島を目前に思うことは、「今の流れ出ている溶岩って時間をかけて富士山の方(内地=本州)から来てるのでは」という事でした。
きっとね、もしかしたらこの溶岩噴出先って富士山だったら?
そう思うとここで3億トンもの溶岩を排出してくれてありがとう、なんて頭を下げたくなってしまい。

閑話休題。
今回の西之島クルーズは西之島を2周もしてくれました。
デジカメとスマートフォンと双眼鏡で忙しかった私は2周目でその全容と音とをやっと落ち着いて味わう事ができまして。
旧島が見えるところ(島の西側)はもう双眼鏡に更に心眼も駆使して(笑)「ををを!あのあたりに鳥がっっ!!」と本物か妄想かわからないものを見て興奮しておりました。そんな背後では生ビールの売り子さんが弁当やつまみも売り出しさすが島民がこぞって参加する「お祭り騒ぎ」だったんだなとちょっと冷静になれたりとかもしました。
とにかく楽しかった、という表現は不適切な心情で居たのですが、2013年に噴火が始まって以来の夢が叶った瞬間でした。

「生きている」という表現はきっと西之島にとっては有効な表現だと思っています。あの鼓動を聞いた方なら。
スコリア丘から吐き出される噴煙と(きっと赤く燃えている)溶岩と雨に湿った空気を引き裂く噴火音とを命と呼べないのなら何を以て命というんだと思うほど、西之島は生きていました。
とにかくカッコ良かったです(もうねホントに語彙がね!乏しくて申し訳ない!)。

風の音がうるさいのですが、噴火音が聞こえる動画です。
この他にも9本動画あげてるのでリンクから辿ってみてください。