ご無沙汰でご報告的な顛末記

コロナ感染しました。
その顛末を。

発症0日目
何となく喉に違和感を感じ始める。
咳も出始め、普段なら「ラーメン!食べる!」が、「…うん、食べられるよラーメン」くらいのテンションに落ちていった感じ。実際食べに行ったラーメン屋さんでも普段なら食べきれる麺量がどうしてもしんどく感じ、パートナーに「(あなたが食べたラーメンの麺量で)足りる?私の食べる?」とビミョウに食べ切れないことを隠しつつ(笑)様子を伺ったりもしていたり。
その後に行ったスイーツ屋さんのプリン(好みの固め仕上がりプリン)は喉越しがよかったため完食。
ラーメンを食べるために並んでいた頃から首と肩に違和感。血管が詰まったような、ひどい肩こりのようで、しきりに首を回したり倒したり。江戸時代の侍のように(いや、これ正しくないかも。勝小吉がこんなことをしていたという何かを読んだだけでそういう習慣があったのかは知らない)肩に傷つけて溜まった血を流したいと思いつつ、顔をしかめて首をぐるぐる回していた。
だんだん座っているのも喋っているのもしんどくなってきたので、早く帰って布団にのめり込みたくなってきた。正直食欲も完全に失せ、パートナーが「肉喰いたい」というのも笑ってスルーして自宅へ。そのまま布団に倒れ込む。途中で着替えたり顔洗ったり(化粧はせめて落とさないと)したけど動く気力はほとんどなし。
日付変わる頃にやっと気力が回復したと同時にケホケホ程度だった咳が、ついにやる気を見せ始めた。

発症1日目
おかしいと思った段階で葛根湯とバファリンを仕込む。うとうとしてすぐに目が覚めるを繰り返すようになって、つま先が冷えていくのを感じる。あ、熱が上がり始めたのかなと、過去の高熱記憶(インフルとかの38℃超えの時の感覚)が蘇ったため、「明日はフレックスで病院行ってから出社かなー」などとこの時はまだ暢気に構えていた。
朝になる前に何度か熱を測ったけど36℃ちょっとだったが、咳が酷くなったため上司に連絡。
近所の病院3か所にアタリをつけ、9時になってすぐ電話をかけてみたけどどこも繋がらず。
「予約優先のため待ちますが」と言われた病院で待っていると、「(症状から鑑みて)診察と検査をするのでしたら診療時間後になりますがいいですか」と言われ一旦帰宅→自宅待機を命じられる。
自宅へ戻ったのが昼前。帰宅後熱を測ったら、37℃近くになっていた。
検査が夕方になるため会社に休む旨連絡し、横たわるも咳が酷くておちおち寝てもいられない。
こりゃ最初から休んでおきゃよかったなーと思いつつも病院からの連絡を待つ。
徐々にぼんやりとしてくる思考。冷たく感じる足先。エアコンは除湿しかつけていないのに鳥肌が立つほど寒い。起き上ってキッチンで水を飲むとどっと汗が出る。布団に戻ると寒くて震える。体内が何かを孕んで脈打つ感じがわかる。内臓の位置が際立つ感じ。気管支も肺も普段は存在もわからないのに今日はなんでこれだけ存在がわかるんだろうと思うほど。
そして喉が悲鳴をあげた。

病院から「今から検査しますので来院お願いします」と電話があり、夕方とはいえギラギラと日差しがきつい中(もうこの時間帯は既に夕方だったので完全に弱っていた私の主観です)病院へ向かい検査。某所で隔離され汗だくで検査準備を待ち、鼻の奥に何やら突っ込まれ「結果が出るまで15分ほどお待ちくd…あら、もう出ちゃった」と完全なる防護服の看護師さんに言われ。
晴れて新型コロナ陽性者となりました。
最初に出た言葉が「そうですか…すみません」だった。
このご時世、2年前の感染ルートがまだはっきりしている頃とは異なり感染経路不明が主流となった現在ではいつどこで感染したのかわからない。しかし個人的には色々気を遣って感染しないよう過ごしているつもりのため、思い当たる行動が実はあった。感染者は増えてきているものの行動規制がされていないため、友人と繁華街でマスクを外した状態で大笑いしていた時間帯があったのだ。
会計を待つ間、明日以降の仕事についてとか休んだ分の資金繰りとか、避けて通れない問題が頭をよぎる。そしてそれよりも何よりも、パートナーが感染していないか、が問題だった。
対処療法として処方される鎮痛剤、風邪薬、抗菌剤などを受け取り自宅へ戻って再度熱を測ると、38度をついに超えてしまっていた。
さらに病院で既に「喉が痛い」と訴えてはいたのだが、その痛みは時間が経つにつれ増していくのがわかった。
自分の体温がコントロールできていない事も辛かったが、とにかく喉の痛みが辛かった。
これほどまでに辛くなるとは思わなかったほど、のどの痛みは辛かった。
大事な事なので何度も言いますが、本当に喉がつらかった。
咽頭部が腫れるのはわかるんだけど、飲み込もうとする際にその飲み込まれる物体が気管の方へ押し上げられるような感覚があり、微量がそのまま気管方面へ流れむせる、といういやな流れが出来つつあった。
飲み込むのが辛いから、口腔内にたまる唾液を吐き出す。
吐き出しきれないから、喉を鳴らして吐き出そうとする。
喉を鳴らそうとすると、腫れた咽頭部を刺激し痛み出す。
痛んだ咽頭部のせいで、咳が誘発される。咳込む。腫れた咽頭部がしみる。
いや、しみるなんてかわいいもんじゃなく。
爛れた粘膜を指でなぞるようなもの。
悲鳴をあげたいがその悲鳴すら痛みの原因となるのがわかっているため、ひたすら半泣きのままキッチンの排水溝へ向かって唾液か痰かわからない粘度高い液体をだらだらと流し続ける羽目になった。
ため息と嗚咽とが混じった液体を一通り流して布団に戻り寒さでガタガタ震えながらフリースの上着を着て電気あんかを抱えてうとうとし、咳込んで目が覚めて喉の痛さにひぃぃぃぃぃとあえぎながらトイレで何かしらを吐く、という笑えない状況が一晩続いた。
ちなみにうとうとしていた時に見ていた夢は常に仕事絡みで「あの書類書き忘れてる」「コメントにあったあの指示をスタッフに伝えていないかもしれない」というようなものばかり。
パートナーが以前「その件に関しては中長期計画に盛込み済のため口頭で回答できません」と寝言言ってたのを笑えないと思った。後でね。

発症2日目
OS-1という経口補水液に関して「美味しく感じると脱水気味」という目安があるそうで(都市伝説)。これがめっちゃしみるので脱水してないよね、と思ったりもしたけど、発症0日目夕方からほとんど水分摂れていない状況で足りているわけないじゃん。という理由からしみる喉を痛めつけつつも頑張って飲んだ。飲んだと言っても口腔内湿らせる程度。そんな微量すらも「ゴックン」が出来ない。咽頭部がどこも腫れて(おそらく)爛れて(おそらく)いるため、OS-1の何かしらの成分(うすら甘くない?)が酷く刺激し飲み込むことを身体が拒否してしまう。痛くて怖くて飲めないのだ。
布団の傍らに置いた500mlのペットボトルは一昨日の夜から200mlすら減っていない(OS-1はボトルに目盛りがついているため、どれくらい飲んだかわかるようになっています)。布団にめり込んだまま体温計を脇に挟むとデジタルの表記が急激に数値をあげていき、明らかに体温の高さを示している。
あまりに喉が痛いため、どうにかして軽減しようと意味があるのかわからないがマスクをしているのだが、そのマスクも息苦しさにうとうと中に外してしまうらしく、気付くと片耳だけひっかかっていることが多々あった。
時折、同時期に陽性者となった友人から安否確認の連絡が来るのだが、返事することで精一杯。
時間の感覚が若干おかしくなっていたため、昨日のことがいつの事だったのかわからない。
今日がいつから何日目?今明るいのは昼間だから?夜はいつ終わった?あのお客さまへの書類がきっと間違えているから作り直して発送準備しなきゃ…。いつ仕事行けるかな…。仕事熱心ではないけどこういう時に彷彿とする仕事は一体何なんだろう。単なる心配性なのか。
熱があってもとりあえず昼夜の感覚は忘れないでいないと(と思ったらしく)カーテンを開けて明るいベランダを見て、自分の役割を思い出す。とにかく植物枯らしちゃダメだ。フリース着たまま30℃近い気温のベランダで植木に水やり。猫にも投薬出来た。そこはある意味本能なのかもしれない。
ぼんやり枕元で眠る猫を撫でているうちに、熱でぼんやりとしてしまっていた自分の輪郭が徐々に形を取り戻していくのがわかった。
流動食をほんの少しずつ摂りつつ飲んだ処方薬が効いてきたらしく、熱が下がり始めたようだった。
昼頃には37℃台になり、夕方には36℃台まで下がっていった。
熱が下がると途端に意識がはっきりしてくるのがわかった。まるでメガネをかけているかいないかの差のようで、熱が下がり始めた途端に物事がはっきりしてきて、とりとめもなく様々な速度で流れていく自分の脳内の考え事(?)が急に速度を落とし足並みを揃えていくようだった。遠くで聞こえるテレビの音声が、突如ノイズキャンセラされ意味がわかるように日本語として識別できるようになった、そんな感覚だった。

発熱に関しては波が引くようにあっさりと消えていってしまったのだが、喉の痛みは別案件としてまだどっしりと居座っていた。熱が引いて意識がクリアになったから余計に痛みに対しての抵抗感が増してしまったようで、辛く厳しい時間が過ぎていくばかりだった。喉の痛みは軽減できないのか。どうしたら痛みを伴わず飲み込むことが出来るのか。鼻に入ってしみることもなく飲み込むことはもう無理なのか。そんなことを考えつつ、キッチンでごええええええとかうえええええとかがあああああとか言いながら唾液を吐く。吐ききれない唾液が口腔内に残って気持ち悪いのでうがいをしてみたら、意外とすっきりとして喉にしみず、さっぱりした。そしておそるおそる口に含んで少量飲み込んでみると、OS-1では涙出るほどしみたのに、あまりしみることもなく飲み込むことができた。思わず歓喜の声が出てしまった。
が、その声は人語として他人が理解できるような音声ではなく、獣の咆哮でしかなかった。
そしてやはり発声はまだ待てということらしく喉にしみてダメージをくらうこととなった。

発症3日目
相変わらず喉の痛みに熟睡できずうとうとして朝になる。
が、今までの投薬と自身の免疫力が力を発揮し喉の痛みに軽減が見えて来た。
今まで水すら飲み込むのが辛かったのに、口を湿らす程度の水量ならゴクンと飲み込むことが出来た上に今までみたいなしみ方をしなくなり辛くなくなってきたのだった。
思わずまたもや歓喜の咆哮をあげてしまう。が、それすらも辛くなく、猫に向かって話しかけた言葉が自分の耳にもしっかり人語として還って来た。
ヒトに戻ってきた。今までヒトではなかったのか。そう思ったが、とにかくヒトに戻った!と嬉しさがこみ上げた。喉はまだ痛いにしても、わずかながら痛みが減ったことがとにかく嬉しくて仕方なかった。おそるおそる含む水の量も少し増やしてみたが、喉へひっかかり鼻の奥がしみてツーンとなることもだいぶ減った。飲み込める量が明らかに増えたのだ。

これまで発症0日目夕方から本日まで布団とトイレ(の通り道にキッチン)しかいなかったため気にもしなかったが突然「あ、風呂入ってないわ」という事を思い出した。髪の毛もだいぶ汚れてしまったのが急に気になってしまい、思わず洗面台の鏡の前で己の汚さに萎える。そして今まで流動食と水分摂取のためだけ外していたマスクを外して自分の顔をまじまじと見た。
発症の1週間ほど前に生まれて初めてのシミ取りレーザーというものを施術したのだが、その痕跡がまだ残る顔を見て「これ剥がれ落ちるのかな」と濃くなった(ように見える)シミをカリカリ爪で引っ掻いていたのだが(良い子の皆さんは真似しないように)、ふと視界に入った唇に驚いた。
紫色、というのは若干大げさかもしれないが、明らかに普段より青が強い色になっていて、「プール入り過ぎて身体冷えてしまった小学生」みたいな状態になっていた。

あ、チアノーゼだ。

季節の変わり目などに気管支喘息かの如く明け方咳込んでヒューヒュー喉を鳴らすことが多かったため、自分のこの唇の色の悪さがどこから来たのかはすぐわかった。
改めて血中濃度を測るとやはり92と正常値よりも低い。
息苦しさはマスクのせいだと思っていたし、呼吸よりも水分摂取に気を取られ血中濃度が90前半だったことも目で見てわかってはいたものの「低いから要注意」というところまで意識がいかなかった。
病院でもらった「陽性と診断されたら」という紙切れを再度見直した。
こんな症状があったらすぐに連絡を、という項目に当てはまるものがある状況だった。
血中濃度については以前元々低めと言われていたのを覚えていたため、95以下が自分の認識では低いと思っていなかったという認識間違いが先行し、更に「90以下になったらやばい」というデッドラインを誰かの陽性手記を読んでそのまま刷り込まれたため、放置の方向にあったのだ。
うーむ。どうしようか。
血中濃度は何度測り直しても92以上を示さず、何度見てもくちびるは変に黒っぽい紫だった。
深呼吸して濃度増やそうとしてもそもそも深呼吸しようとすると咳が出て喉が裂けそうな痛みが走りひあぁぁぁぁぁぁと変な声が出てしまうため、濃度増やしたくても増やせない状況だった。
とりあえず人語が喋れるようになりつつあったため、意を決して行政運営の自宅待機者相談ダイヤルへ架電。何度かけても繋がらないとかそんなもんかなと諦めていたが、意外とあっさり1回目で繋がり、看護師さんと会話ができた。内容については割愛するが、私の声の調子(音声ではなく、声のトーン?落ち着いて電話している感じとのこと)から「もし容態に変化があったらまた電話してください」というところで終話。家の近くの夜間緊急連絡先をお伝えしましょうか?と最後に言われたがここまで話すのに20分近くかかってしまい、やっと人語喋れるようになってきたばかりの私としてはだいぶ消耗していたため「もし(ゼェゼェ)つらくなったら(ゲホゲホゲホ)その時(ゼェゼェ)またでn(ゲホゲホゲホ)んわします(ためいき)」といったようにほぼ会話にならなかった。
この時話した看護師さん、本当に聞き苦しい声を聞き取ってくださり本当にありがとうございました。
言っちゃえば「その状況ならまだ自宅で耐えられるっしょ、がんばりや~」ってとこだったと思われます。まぁ頑張ったけどね。
水分がまとめて摂れるようになったという事だけで回復してきた!と思っていたけど、実はこんなところに落とし穴のようなものがあったとは…と後から少し怖くなった。
流動食もひとパックを時間かけながらも完食できるようになり、水分も夜にはコップからゴクリゴクリとまとめて飲めるようになった。

この先は徐々に回復の一途で、途中下痢に見舞われたりもしたけど概ね問題なく。
長くなったのでこの辺で。