やりにげ/みうらじゅん

yarinige

やりにげ (新潮文庫) [文庫]

みうらじゅんの著作物は多分「見仏記」くらいしかまともに読んだ記憶がなく。
あ、でも「アイデン&ティティ」は大好きで(映画ね)なんかもー泣きっぱなしになるんだけど。
懐かしすぎて。

もともとみうらじゅんは中学時代に読んでいた「宝島」でその変な人っぷりを知っていたので、マイブームという言葉が流行語大賞になった時も「なんで今更みうらじゅんなわけ」くらいにしか思っていなかったしそもそもあんまり正直絵が好きではなかったのでハニワのハニーもどうでもよかったりしていたんだけど。
宝島といえばあまずっぺー思い出が山盛りでもうオトナになってから「読んでました」というのも憚られる雑誌のひとつだと認識しているので(あ!でも当時はロックな雑誌だったのでそんなでもなかった!という反論も付け足しておく)あまり言わないようにしていたけれどわたしのほとんどを構成した10代中頃でとにかく読んだのは宝島と江戸川乱歩先生だったため隠していても滲み出てしまう「宝島臭」はもう隠すのをやめようと思っていたりもするのであって。
何が言いたいんだ。

「やりにげ」ってさ、「オレホテルまで連れ込むのはなんの問題もなくこなせるんだけどね」という前置きがあっての行為だって気づいているのだろうか。ホテル連れ込んで(まぁ自宅でもいいけど)やりちらかして腕枕のひとつもなく賢者タイム(便利な言葉だなぁ)から横で「ねーねーこのあとどうするぅ?あたしおなかすいちゃったー」と髪の毛とかしながらしなだれかかる女をどう追い返そうかとぼんやりタバコ吸いながら考えることができる男がやれる「にげ」なのであって。
そもそもの大前提として「女の子口説ける(そして成功率高し)」なんであって。
じゃなきゃやっても逃げらんないじゃん。
みうらじゅんが性の探究者であろうとも、そもそもの「撃って当たる」が高確率じゃなきゃにげもクソもないものであって。
というわけで正直この本をわたしは「なにこのモテ自慢」と読んでいたのでありました。
もちろん文章の素晴らしさもあるんだけど、珠玉の比喩は電車の中でも思わず復唱してしまいたくなるほど。
堂々とこの表紙にカバーもかけずに読んでましたが(さすがに眉は動かさずに読むようにしてました)、面白かった。

貸してくれた方(実は買ってなかったのだ)の「返却時はカバー必須でお願いします」が一番のhitかもしれないんだけど(うひゃひゃひゃ!ボールドかけてやったぜ!ひゃっはー!)。