小笠原諸島へ行ってきました【父島森歩きツアー編】

到着日はずっとふわふわと岡酔いしてましたが、ナイトツアーを終え宿に帰るとさっさと寝てしまいました。
よっぽど疲れていたんでしょうね。
翌日は「森歩きツアー半日コース(東平アカガシラカラスバトサンクチュアリ内探索)」に参加しました。

▼関東森林管理局 内「森林生態系の保全」
http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/tokyo/ogasawara/seitaikeihozenn.html

「アカガシラカラスバト」という絶滅危惧種を守ろうという区域で、ここに入るには専任のガイドが同行しないといけないところです。
父島はこういった保護区域が多く、私のような勝手に1人でどこにでも行ってしまうような輩も森を歩きたいと思ったらツアーに参加しなくてはいけないわけでして。ちょっときゅうくつ…と思いましたが、行きの船とビジターセンターで学んだ「生態系の保護」という観点から見るとちゃんと守らなくてはいけない事だと思っています。
だいたいの解説は上記管理局のサイトに記載されているので特筆しませんが、アカガシラカラスバトはさすがに絶滅危惧種だけあって3時間ほどの探索では姿を見ることができませんでした。しょーがないよね。
その代り、普段本州では見ることの出来ない植物がたくさんありました。
ツアーガイドさんが逐一、丁寧に説明してくださいました。

img_3111 img_3112

まずはタコノキ。

タコノキ(蛸の木、露兜樹、学名Pandanus boninensis)は、タコノキ科の常緑高木。雌雄異株。小笠原諸島の固有種。海岸付近で生育する。種名boninensisは、小笠原諸島 (英名 Bonin Islands) に由来する。
小笠原諸島の海の近くに自生し、高さ10mほどになる。タコノキ科植物全般に見られる特徴として、気根が支柱のように幹を取り巻きタコのように見えることからタコノキ目の基準種となっている。葉は細長く1mほどに達し、大きく鋭い鋸歯を持つ。初夏に白色の雄花、淡緑色の雌花をつけ、夏に数十個の果実が固まったパイナップル状の集合果をつける。果実は秋にオレンジ色に熟し、茹でて食用としたり、食用油を採取する原料とする。(wiki:タコノキより)

細い主幹から生える枝に注目です。主幹と同じような太さでしょ。こんな枝が生えてきてしまうから地下の根だけでは幹を支えきれないため、幹下部から地表に向かって生えていった気根が地下に潜って支えているんだそうです。その姿がタコのようだからタコノキ。にしてもこの木をまじまじとツアー参加者さんたちと見ていて(ご夫婦、父世代の男性1名、私の4名でした)、ガイドさんの「ある植物学者は『植物にも意志がある』って言っているそうなのですが、なんだかわかる気がします」という言葉に思わず深く頷いてしまいました。
もしこの太い枝を持つ木が倒れてしまったら。きっと意志なんて持っていなかったら「まっすぐ立っているために気根を生やそう」なんて思わないでしょ。まっすぐ立っていたい、という理由(=意志)がこの幹のようにあったからタコノキはタコノキになったんだと思います。

そんな植物たちの意味や意図を、ここではたくさん考えさせられました。
img_3115
椿の木に寄生したヤドリギの1種。丸いのが葉っぱ。寄生していながらも、光合成を行うそうです。

img_3118
内地では見慣れた木が伐採後放置されていました。これ、もしかしたら松かな?と思ったら小笠原では松の種類は「外来種」として駆除対象だそうなのです。
これは入植時代に持ち込まれた動植物のひとつで、やはり固有種を凌いでしまうからということで。

img_3120 img_3123

こちらはマルハチ。

父島の中央部から南部にかけての湿った林内・林縁や沢沿いにかけて木生シダが多くみられます。また母島へでは多数のマルハチがうっそうと茂る森の樹冠から突き抜ける姿は南国的で美しいです。幹はときに10メートルを超え、森の中のタワーか巨大なオブジェのようです。
 マルハチは、名の由来にもなっている茎の表面にある葉柄の落ちたあとが特徴的です。漢字の八の字を逆さまにしてまるで悪戯書きのような面白い模様が目を引きます。茎は少し突起がありますが触れてもごわごわするだけでヘゴのような痛さはありません。
 父島にある木生シダは、広域分布種のヘゴと小笠原固有種のマルハチと小笠原固有種で父島にしか分布しないメヘゴがあります。(出典:小笠原植物誌

朽ちた木の皮が落ちていました。
img_3131
やーん持って帰りたいーって思ったけど保護区域からは全てのものが持ち出し禁止なので残念ながら置いてきました。

こうやって生えている木を見上げたり、足元のグリーンノアールという優雅な名前の外来種トカゲを捕まえてみたり、すぐ近くまでまるでちょっかい出しにきたようなウグイスに「かわいー♡」とキャッキャしたりしながら歩きました。
2時間半くらいかけてさほど高低差のない森の中をてくてくと歩きながら様々な動植物の説明をしていただきまして。
森の中とはいえ、低木が多い箇所はガッツリ降り注ぐ紫外線に目を細めながら歩いたのですが、とにかくガイドさんの解説が興味深く楽しくて。協調性Eのこの私が独り後ろからだらだらとついていくなんて事もせずひたすら「これはなんだと思います?」という問いに必死に食いついたりして、思っていた以上の充実度でした。

海洋島という海に隔離された小さな島がこれだけ豊かな世界を作り上げたのは本当に奇跡だと思います。
足元の水たまりにいた小さなエビの仲間も何世代も前に偶然たどり着いたお蔭な訳ですし、小笠原諸島の動植物94%が小笠原固定種という事はこの島に辿り着く難しさ、根付く事が出来る環境、天敵の有無という高いハードルを超えたお蔭なんだと思います。
この島に生きる者たちはそういった試練を乗り越えて続いてきた命なんだということを、体感としてもらうことが出来ました。
陸地から遠く離れたこの場所で生きてきた生物たちに、この先もずっと生きていてもらいたいと改めて思いました。私たちが知らないところで育まれてきた命ですが、その価値はどこにあっても同じものだと思うし、どんな種類の生物も他種に侵食されていかれないように棲み分けをきちんとすべきなんだと思いました。
このアカガシラカラスバトサンクチュアリはそんな想いのこもる場所でした。

そしてこのアカガシラカラスバトはなぜ絶滅に追い込まれたのか、というのはヒトが持ち込んで野生化したネコでした(だけじゃないけどね)。
父島には野生化したヤギとネコが外来種として排除・保護対象とされています。
そんな話は最後にまとめて。

レンタルサイクル編へ。