奏楽堂、三越の第九/年末のご挨拶

なかなか自宅でPCに向かえなかったので、書き溜めておきました。

第九というか、合唱を始めてまだたった4年目で舞台に乗った回数だって数えるほどなんだけど、今回ほど様々な感情と感動が交錯してしまったのは初めてだったかもしれないです。
そもそも今回の第九に参加しようと思ったのは、「三越本店大階段にて歌う第九」に参加したかったから。
私にはあのようなスタイルが「日本の第九」の象徴のようで、日本人が年末に歌う第九の集大成のような気がしてならなくて。小学校の頃に観た第九の印象ととてもかぶる(もうおぼろげなのでなんともいえないけど)のでした。
なので申し込み当初「正直奏楽堂はどうでもいい」とか極めて不謹慎なことを言っておりましたが(笑)、そのどうでもいい奏楽堂に乗るための練習でがらっと変わってしまい、当日のリハですら既に涙こらえて上ばかり見ていました。
というのも、合唱練習を担当されていた酒井先生のおかげです。
第九の練習が酒井先生でなかったら、きっとここまで第九とベートーヴェンを理解しようと思わなかったと思います。それだけ私は影響されました。わかりやすい指摘とたくさんの素晴らしい表現とを毎回の練習でふんだんにいただく事ができて本当に嬉しく楽しく練習ができました。

今回の第九でやっと「歌詞の内容」に迫ることができました。
今までは本当にただ「ざいとぅむしゅるんげんみーりおーねん…(←主題の方をチョイスする辺り、ちゃんとわかってきたというアピール(笑))」歌っていたのですが、そのドイツ語に含まれる意味をできるだけ客席のお客様に伝わるようダイナミクスはもちろん顔、顔!顔でも表現することを教わりました。
先月のアンサンブルエテルナの演奏会で改めて思った「表現」、楽しいところは楽しく歌うとたとえ歌詞に「楽しい」なんて書かれていなくても楽しさが伝わる事にやっと気づいたため、シラーの原詩から読み解かれた「歓喜」を私なりに表現しなくちゃと頑張りました。がんばった?いや、それよりもどちらかというと、むしろ作曲したベートーヴェンの苦悩の方に寄り添ってしまったのかもしれません。どうしても心の底から発せない「フロイデ」について、他様々な抱えている問題や人との関係など、どこか吹っ切れない何かがずっとあって、そんなのを抱えて迫る本番についにストレス性の蕁麻疹まで出す始末で。楽しみにしている第九なのになぜ…と気持ちは焦る一方で、練習が終わってしまう寂しさや初めての暗譜に対する不安など(舞台あがったらマッチロになっちゃって歌えなかった…なんてことになりそうで実は怖かった)が黙っていても噴出してしまったのかもしれません。

夢の第九を3年続けて培った基礎から、今回の第九の練習で表現する手法を得た事でもう少し伝える事ができるようになったのでは、と思っています。まだまだつられやすいし集中力はなかなか続かないし私の身体で一番か弱い声帯が全然強く育ってくれる気配はないし、たくさん課題はあるけれどその分まだやめられないという事のようです。ひとつ成長したと思えば、新たな課題が見つかっての繰り返しが成長だとするのであれば、私もまだ成長していくのかもしれません。

奏楽堂には神様がいるそうです。
リハの時に探そうと思ったのですが、客席一番奥にいらっしゃった酒井先生の姿が気になって、そしてこれ(リハ)を歌いきってしまったらもう本番しか歌えないと思ったら涙がこみ上げてしまってそれ押さえるのに必死になってしまって。神様がいたのかはその時わからず仕舞でした。
でも、本番でたくさんのお客様に見守られていて、M辺りで何か突然吹っ切れたというか、はじけたというか、天井にあるライトから何かよくわからないけど暖かい光のようなものを感じて、「あぁ、きっとこれが『歓喜』なんだ」と思いました。思わず両手を広げて受け止めてしまいそうになったのを頭の片隅に残っていた冷静さがやめさせてくれましたが。リハ前に酒井先生が「ファゴットの音がベートーヴェンなのではないか」と話してくださった、まさにそのベートーヴェンが顔を上げ見上げた先にあった光が私にも見えたようでした。
第九に込められた思いというものを初めて感じられ、奏楽堂の神様は結局姿は現さなかったけどきっとそういうものを得られたことがわたしには神の存在と同等のもののような気がします。
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三越の第九は、年末の風物詩として在る姿のひとつだと思っていまして。
数年前に三越の第九を知ってからこれに出るにはどうしたらいいんだと思っていて。きっと敷居の高い合唱団がやっているんだろうから私みたいな素人は無理だろうなぁなんて思ってあきらめていました。が、「申し込んでみればいいじゃない」という後押しから当日を迎えることができました。
思っていたよりも(代々木体育館並だと思っていたのですが)天井から降るような反響が心地よく、立ち位置は狭くて結構過酷なステージだったのですが上を向いていないと涙こぼれそうになるほど、「ここに来られた」事が深く胸に染み入りました。
やりたかった事としての「三越の第九」、この場所で来場された方々へ大きく腕を広げて抱擁できたと思っています。
嗚呼書きたいけど言葉は出て来ないし時間はないし(笑)
また改めて。
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当日、MXテレビのニュースで取り上げられていました。

日本橋の百貨店で 年末の風物詩「第九」の大合唱

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年末のご挨拶です。
あっという間の1年でした。
愛猫の死から立ち直れないと思いながらもヴェルレク、第九と合唱の深みにはまった1年でした。
映画は今年は劇場に足を運ぶ事もなく(インフルで自宅待機時に観ただけかも)、本についてはここまで読書数が少ない年も珍しいほど。活字に飢えるヒマもなかった(笑)
仕事も年明けから事務職になりギャップに苦しむ日々が続きましたが、それも何とか克服しつつあります。まだまだだけどネ。
来年も2月に初めてオペラに出て、秋には三味線も披露になると思います。
常に穏やかな流れにたゆたいたいと思いつつも自ら激流を好んでいるようですが、そろそろ体力や精神力などを考慮するというブレーキをもたないといけないなぁと思っています。きっと私は死ぬまで走り続けるタイプなのでしょう。死んでからも死んだの気づかずに走るタイプとか。あれー?身体透けてないー?とか言って。

勉強・成長というのはいつどこでもどんな環境におかれていても、人が人として生きるための大切な糧だと思っています。
常に好奇心を持ちアンテナを錆びさせずに来年もいたいと思います。
来訪者さまも良いお年をお迎えください。