文京区民参加オペラ「ロメオとジュリエット」終演しました

色々書きたいネタはあるけれどまずこれを先に。

文京区民参加オペラ「ロメオとジュリエット」、無事終演いたしました。
ご来場の皆様はもちろん、私たちが舞台に立つために多大なるご支援をいただいた皆様には本当に感謝です。
ありがとうございました。
ほんの思いつきというか興味本位で申し込んだオペラで、これほどまでたくさんの事を学び考えるとは思いませんでした。

(素人ながら)歌う者として、やはりやってみたいことのひとつで「オペラ」は視界にありました。
もちろんソリストは程遠いわけですが、合唱で舞台に立つなんてのも想像の範疇に入っていた自分も今思うとすごいと思うのですが、そういった心持ちをサポートするが如く「市民参加オペラ」というカテゴリ(?)があったなんてと本当に嬉しい次第でした。
採用通知が届いた日の喜びようは忘れられません。
そして何よりも心強かったのは、夢の第九・アンサンブルエテルナとお世話になったピアノの先生、竹ノ内先生に再会ができたことでした。なんでもひとりで飛び込んでいく割には肝っ玉がちいさいため、まったく未知の世界のフランス語にくじけそうになっていたところで「合唱指導のピアノ伴奏で入ります」という竹ノ内先生から聞いてどれだけホッとしたことか(笑)

今回参加した文京区民参加オペラは今年で16回目。文京シビックホールができた年に始まったそうです。
初回の説明会で「お久しぶり」なんて会話が飛び交っていたので、半数以上が2回以上の参加だったようでした。
16回目は16回目、とはいえ15回目を知っている人とはやはり勝手が違うのは当たり前で。話の折に出てくる「カルメン(15回公演)の時は」という言葉に毎度キョトンとするのに気づいた方がいたかどうかわかりませんが、初めて参加する私(他の初回の方々)にとって常連(と化した方々)との距離を感じざるを得ないものでした。だからといって卑屈になっていたわけでなく、前回を知らなくても今回をきちっと決めればいいことと思い演出の先生の指摘を必死に追っていましたが、「前回(正確にいうと以前、なのかな。カルメンが比較対象でなくてもっと前を指していた気がする)はこうだった」というような話を耳にすることが多くなんとも言いがたい気分になることが多々ありました。
それをはっきりと感じたのはゲネプロのダメ出しででした。
演出の先生が仰る「お客様からお金を戴いて観ていただく以上プロとして自覚を持ってほしい」という言葉に対し「それじゃあ楽しくないわよね」というひそひそ話が聞こえて、あぁこれなんだ、とやっともやもやしたものの正体が見えました。常連といってもいいくらいに回数重ねた方々にはきっとカルチャースクールで習ったフランス語のお披露目会という感覚だった方がいらっしゃったようで。
そうか、そこなのか。
稽古が始まってから毎日通勤でロメジュリを聞き、会社に楽譜のコピーを置き、合唱指導の先生が作ってくださったフランス語の読み方の冊子をコピーして手帳にはさめるサイズにして電車の中でも見られるようにしたり(実際にはなかなか混み過ぎで開けなかったんだけど)、ソリストではないにしろたったひとりでも変な音を出すとわかってしまうからと頑張っていたのですが、「音を覚えたら楽譜に書き込んだカタカナの発音は消してください(正しい発音で発音せずにカタカナで覚えてしまうから)」という合唱指導の先生の言葉を無視して立ち稽古用にカタカナでアンチョコ作る人とかいて、なんでこんなに指導者をなめくさっているんだろうと驚いたのでした。
そうか、それじゃあ「プロ意識」に「楽しくない」って反論するわな…。
女声合唱は「カプレット家(ジュリエット側ね)筋の裕福な人たち」という立場上、ロメオ(モンテギュー家)を敵視するのですが、原作読んだり稽古でロメオを
見ているとどうしても純粋な憎しみというものがもてなくなってしまって(ロメオ役のキャストさんのキャラも良かったという相乗効果もありますが)、そういう葛藤のようなものをどうふまえてロメオを憎憎しげに「お前が悪い」と放てるだろうか、なんてところまで考えていたのですが。そういった場面についても「(先生に)言われたとおりにハイ演技演技~♪」だったかと思うとなんだかこんなに煩悶とした私はのめりこみ過ぎたのかと逆に反省しなきゃいけなくなりそうで。

…とまぁ、色んなものを(私なりに)抱えて稽古に出ていたのですが、やはり「初めてのこと」は新鮮で楽しかったのでした。
立ち稽古で女性は本番の衣装の裾捌きを覚えるために同様のドレスの長さのスカートを履いてやる、なんてのも舞台に縁がなかったため知らなかったですし。そんなところですら私には「ほー」と目を開くところでありました。

「ロメオとジュリエット」というその悲恋については原作読んでもピンとくるものがなかったのですが、最後の通し稽古かな、ジュリエットが短剣で自害するシーンで思わずうるっときてしまったりなんて、きっとずっと観て来たからの感情移入なんじゃないかと思ったり。ロメオについては女性陣と「ロメオはきっとダメ男に育つから、ジュリエット苦労する前で良かったのかも」なんて大笑いしちゃったんだけど(みんな親目線(笑))だってジュリエットに一目惚れしてそれまで追いかけていたロザリーヌなんて一瞬にして忘れちゃうでしょ、確かに親友かもしれないけどカッとなってメルキューシオ殺されたからって抜刀するでしょ、しかも殺しちゃうでしょジュリエットの親戚を。「あんな短気なロメオに苦労するよジュリエット」「きっとロメオは酒場で暴れてまた人を殺すか殺されるかするよね」「きっと浮気し放題だよ」等々(笑)ひどいもんだ(笑)でもみなさん口をそろえて「あぁもう心配!!」でした。これってきっとみんなだめんず好きなのね。そんな気が。お母さん目線で男性を見るときっとそういう男にひっかかってしまうのかもしれない。なるほど(笑)
で、そのあっさり鞍替えされてしまったロザリーヌなのですが、彼女はどんな女性だったのでしょうね。私は「もしジュリエットがいなかったら」のロメオとロザリーヌの間柄も気になっていて。というかこのロメオとジュリエットという世界に彼女はどういうポジションなのかと思っていて。きっとこのお話の中で唯一、幸せな人なのかもしれない。そんな風に思ったりもしています。
そして、もし。
ロメオとジュリエットがあの時死なずに手を取り合って歩き始めていったら、その先にあっただろう未来はどんな色だったんだろう。
それを思うとどうしても風と木の詩のジルベールとセルジュが手を取り合って向かったパリを(本当はマルセーユに行くはずだったんだけど)思い出してしまって切なくなって。想いが現実を超えてしまう事を、若さというのでしょうか。二人が死ななきゃいけなかった事の悲しさよりも、決して輝いて見えない未来しか見えていないのが2人には見えなかったことが私には悲しかったです。

最後に、7か月でしたが同じ楽譜を持ち「成功させる」という目標に向かって歩いた事で、短い期間ながらも結束ができたと思っています。
終演後の打ち上げでは、あんなに心のこもった握手を何度もさせていただいて、本当にこの舞台が終わってしまったことが寂しくて。
舞台の魅力に嵌る方たちの気持ちが良くわかりました。きっとそう思う私も嵌ったんだと思います。

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